奥穂高岳

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レポート内容 2010年9月20日(月)
天    候 小雨

 深夜3時半に目が覚め空を見上げるとどす黒く厚い雲が空を覆っています。遥か東の方向は黒くありませんが西方向を見れば暗くてどんよりとしています。
 トイレに行って天場に戻っているとポツリぽつり・・・風が吹く前に撤収です。
 山荘の玄関の庇の下で荷物をまとめ終わったのが4時30分、雨は酷くなる一方です。今日は奥穂高岳まで歩きますが、濡れた岩場は危険ですので迷ってしまいます。雨が酷ければ西穂高岳をピストンして下山するしかありません。何という無情の雨でしょうか・・・
 雨の状態を見ていると徐々に夜が明けてくるとともに雨も小降りになってきましたが、風も出てきました。5時20分、雨が弱まったのでとりあえず西穂高岳に向かうこととして、奥穂まで行くかどうかは西穂高岳頂上で考えることにします。
 まずは西穂独標が最初の目的地になります。所要時間は1時間30分です。
 出発して稜線を登りながら振り返ると焼岳が霧の向こうに微かに見えています。

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「振り返れば焼岳が霧の向こうに」 「中央右の平らなピークが西穂独標」
(ここから西穂高岳は見えません)

 暫くはハイマツの中の登山道を登って行きますが、標高が2600mを越えて西穂独標が近くなるとハイマツは徐々に少なくり岩稜になりました。
 西穂独標の直下までは難なく歩けますが、直下から30mは急な登りなので手を使わないといけないところもありました。
 西穂山荘を出て1時間で西穂独標に到着です。ここで一休み。
 一息ついていると年配の男性が西穂高岳方面から降りてきました。話を聞けば昨夜は西穂高岳でツェルトを使ってビバークしたそうです。理由は小屋と天場が一杯だったからだったとか・・・
 雨は強くもならず弱くもならず変わりません。幸いなのはガスが出ていないことです。左下を見れば中野高原が見えています。
 とりあえず予定通り西穂高岳まで行くこととします。

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「西穂独標に到着」 「奥穂高岳はガスを被っている」
(左からピラミッドピーク、西穂高岳、間ノ岳)

 相変わらず小雨が降っています。
 西穂独標から先は完全な岩稜帯で手を使わなければならない場所が増えてきました。雨で濡れた岩は滑りやすいので気を付けなければいけません。でも、滑りやすいものは滑りやすく、注意するのでペースダウンしてしまいます。
 岩稜を登りながら振り返るとそれまでうっすらと見えていた焼岳はガスに包まれてしまっていました。
 岩場を登りきるとピークに到着、ここがピラミッドピークです。白いペンキで8峰と書かれています。先ほどの西穂独標は11峰でした。 これってひょっとすると奥穂高岳までのカウンターか?

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「振り返れば焼岳はガスの中」 「ピラミッドピークに到着」
(正面の屹立したピークが西穂高岳)

 西穂独標から西穂高岳までの所要時間は1時間30分、ピラミッドピークまで20分ほど歩いているので後1時間ほどで西穂高岳に到着するでしょう。
 ピラミッドピークから西穂高岳までの直線距離は500mです。が結構アップダウンがあり、しかも岩稜なので少し時間が掛かりそうです。
 順調に進んでいるとカウンターの減り方が速い・・・。どうも、これは奥穂高岳までのカウンターではなくどうも西穂高岳までのカウンターのようです。
 岩稜を順調に進んでいるとあるピークで新しい標識でチャンピオンピークと書いてあります。こういった勝手なプレートはごみのほかでもなんでもない・・・。困ったものです。
 順調に歩いて7時47分に西穂高岳に到着です。

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「いよいよ西穂高岳が近くになった」 「西穂高岳に到着」

 頂上には私よりも先に出発した大坂の若者(Iさん)が休んでいます。すると石川県の人(Yさん)が到着、実はこの人は西穂山荘の天場で知り合いになった人です。
 さて、これからどうするか・・・。とりあえずフルーツ缶詰で朝食をとります。
 雨は止んでいませんが少し小降りになったようです。風は?風はありません。
 今日はこんな天気だから後から来る人はいないと思うし、向こうからも来ないと思われ、それならばゆっくりと時間を掛けても渋滞にしてしまい人に迷惑をい掛けることはないからマイペースで安全に歩けると判断して奥穂高岳に向かうことに決めます。
 出発して岩稜を下ると白玉の木が綺麗になっていました。
 一旦下って登り返して穏やかなピークを越えて下ると右に鎖が付けられています。が見れば何ということでしょう、ほぼ垂直に下っています。しかも、落ちれば止まりそうもなくとても危険な場所です。(下山して考えるに私にとってここが今回の一番の難所でした)
 みれば鎖の終わりまで安全に一息つけるところはなさそうで、鎖が終わる10mほど下ったところからトラバースするようです。でも、この鎖べっとり濡れていて下手すると滑って落ちること間違いなし、完全に鎖に頼らないで慎重に足場を見つけて下ります。

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「白玉の木」 「ほぼ直角に下る鎖場」
(落ちればアウト)

 今回一番の難所であった場所を10分掛けてクリアし、次の目標の間ノ岳に向かいます。でも、この10分をカシミールで見ると水平距離45mしか有りませんでした。
 難所をクリアしてちょっとしたピークに登っていきます。登りきるときっと正面にはガスが立ちこめています。快晴ならば綺麗な稜線が見えたことでしょう。
 このピークに遺留品があります。山シャツと袋に入った三脚です。そういえば西穂山荘の玄関の扉に行方不明者の情報提供を求める貼紙がしてありました。その人のものでしょうか?目を南西に向ければ西穂高岳はすぐそこ、まだまだこれからです、先を急ぎましょう。

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「持ち主はどこに行ったのでしょうか?」 「振り返れば西穂高岳はすぐそこ」

 ピークから10歩ほど下りふと頭を上げると何だかガスが取れそうな感じがします。少し待っているとガスが流れ始めました。急いでピークに戻ります。
 ガスが流れていきます!
 絶景だ!
 すぐにガスが沸いてくるので慌ててシャッターを押す!
 一通り写真を撮り終えて右を見たら南アルプスと中央アルプスが見えている!
 その左に?
 あれは?
 あれは富士山だ!

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「槍ヶ岳から前穂高岳まで綺麗に見えた!」

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「南方向に富士山」
(富士山のすぐ右に甲斐駒ヶ岳、そして少し離れて北岳)

 ゆっくりと景色を楽しみたいのですがそうも行きません。と思っていたらガスが再び・・・
 さぁ間ノ岳を目指して出発です。
 間ノ岳まではそんなに危険な箇所もなく小雨の降る中を順調に歩くことができて30分で間ノ岳に到着です。しかし、間ノ岳には三角点もなければ標柱もなく、岩に白ペンキで「間ノ岳」とだけ書かれていました。
 間ノ岳を過ぎて奥穂高岳に向かっていると今までごつごつした岩稜でしたが、だんだんと整列した岩場になってきました。そうスラブです。まだそんなに酷くはありませんが逆層スラブになっています。
 一旦飛騨側に大きく回りこんで下っていくと逆層スラブの鎖場にやってきました。今日は岩が濡れているのでこのようなスラブ地帯は鎖がないと滑って登れないでしょう。鎖を使って一気に登ってしまいます。

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「間ノ岳頂上には何の標識もない」 「鎖を使って滑らないように・・・」

 逆層スラブの鎖場が終わり振り返ると間ノ岳からの下りが見えました何という岩稜でしょうか。
 逆層スラブからの登りを登りきるとそこは天狗の頭でした。
 既に時刻は10時を回っています先を急ぎます。

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「振り返ると間ノ岳からの下りの岩稜」 「天狗ノ頭(天狗岳)に到着」

 天狗ノ頭から暫くはナイフリッジが続きます。でこぼこがなければ問題ないのですが、1mほどの高さのでこぼこが結構あって、慎重に通過しないと落ちそうになってしまいます。回りを見渡してもガスに包まれて何も見えません。でも幸いなのは50mくらいは視界が利くことです。
 順調に30分ほど歩いてようやく岳沢ヒュッテへの分岐に到着です。ここまで丁度3時間掛かっています。時刻は10時47分です。でも、地図を見れば、西穂高岳から奥穂高岳までの丁度中間ポイント、ということはあと3時間は掛かりそう・・・
 標識には誰が忘れたのか手袋が置かれたまま。手袋をしての岩場の通過は危険です。

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「天狗ノ頭から暫く続くナイフリッジ」
(両サイドはスッパリと切れている)
「岳沢への分岐に到着」

 岳沢への分岐から岩場を登っているとガスが再び流れていきます。振り返ると一瞬眼下に上高地が見えました。その右には天狗ノ頭です。
 ここからの稜線も両サイドがすっぱりと切れたナイフリッジで注意して歩きます。少し風も出てきました。YさんとIさんは手袋をして登っているのであまり冷たさを感じていないようですが、私はとても手が冷たい・・・(手袋をしている恐ろしさも感じていない様子・・・)

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「一瞬ガスが晴れて振り返ると眼下に上高地が見えた」
(正面のピークは天狗ノ頭)
「延々と厳しい岩稜が続く」

 岳沢分岐から延々と続く岩稜を2時間歩いてコルに降り立つ。すると先行していた二人が先の岩を見上げている。ジャンダルムだ。
 正面に鎖が垂れ下がっていて、その上には「ジャン」、右には「奥穂」と白いペンキで書いてある。いよいよである。
 鎖はフェイスに垂らしてあり自然の足場はない。近づいてみるとM20ほどのアンカーボルトが打ち込んである。ザックをデポして空身で登ることにする。
 鎖に取り付いてアンカーボルトに足を乗せて鎖場を一気に登ると後は難なく登っていける。登っていると黄色いマークがついている。登り始めのコルから言えば左の方向で、それを目で辿っていくと何と巻道があった。鎖の登りみたいな危険なことをしなくてもジャンダルムには登れたんだ。
 そして岩場を登ること12分でジャンダルム頂上に到着。時刻は12時37分、残念だがガスで眺望はない・・・

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「ジャンダルムへの取り付き」 「ジャンダルム頂上」

 眺望が楽しめたならゆっくりしていきたいものだが、ガスで何も見えなければ仕方がない。本当ならばここで無線をするはずだった・・・
 下りは巻き道を使って難なく下る。さぁ後は奥穂高岳だ。と思ったら、再び正面の鎖を登らなければならないことに気が付いた。結局1回は使わないといけなかった訳だ。
 しかし、再び使う鎖の上部右に「奥穂」と書いてあり、その先を見るがスッパリと切れている岩場しかない。どうもその岩場をトラバースするらしい・・・
 YさんもIさんも動かない。ここを通過しないと奥穂高岳には行けない、ということで私が一番手に行くことにする。
 再び鎖に取り付いて矢印の方向に進むと結構広い幅でトラバースできる足場が続いている。なぁんだ楽勝じゃんと思いながら先に進んでいるとその幅がどんどん狭くなっていく。そして岩場のトラバースとなった・・・
 でも、鎖は?
 無い!
 素手でホールドを探しながら3点支持でトラバースする。おぉ怖い!
 ジャンダルムを巻いてから40分ほど歩くといよいよ急峻になってきた。見れば「ウマノセ」と書いてある。

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「ジャンダルムを信州側に巻く」 「馬ノ背の入り口」

 「ウマノセ」と言うことはこれを通過すればいよいよ終点奥穂高岳だ。
 馬ノ背に乗っかって登って先を見ると狭〜い!。そして進むともっと狭〜い!

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「馬ノ背に乗ると狭〜い!」 「更に進むともっと狭〜い!」

 この「ウマノセ」今日は危険だと勝手に察知した脳が馬ノ背の飛騨側をトラバースしろと指示を出したのでそれに従うことにする。見ればそのほうがルートとして安全だ。
 順調に歩いていると前方に人が見えてきた!ようやく奥穂高岳に到着だ。時刻は14時3分。西穂高岳から丁度6時間だ。
 遅れてきたYさんとIさんと3人で今日の無事を喜ぶ。
 奥穂高岳頂上は風が強く、手が冷えてどんどん感覚が無くなっていく。さぁ奥穂山荘に向かおう・・・
 そういえば、初めて単独で奥穂高岳に来たときは雨でその中前穂経由で岳沢に下った。
 2回目、由李子を連れて来たときも雨だった。涸沢の紅葉が綺麗だった。
 そして今日も雨・・・。私と穂高は相性が悪いみたいだ・・・
 奥穂高岳を後にして下るがなかなか梯子に到着しない。こんなに遠かったかと思いながらコースタイムの30分で山荘に到着です。

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「奥穂高岳に到着」 「山荘に到着」

 縦走の第2日目が無事終わりました。明日の天気はどうでしょうか?
 依然として雨は降っていて、小屋のおかげで風を感じませんが、飛騨川からの風は強くビュンビュン音がなっています。こんな状況ではツェルトは使えないので今日は小屋泊まりとすることにしました。
 予定では明日キレットを通過して槍ヶ岳まで行く予定です。
 本当に明日の天候はどうでしょうか・・・

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