不帰嶮

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                                           左からT峰、U峰北峰、U峰南峰、V峰

山 行 日 程 2011年8月4日(木)〜6日(土)
天   候 第1日目 曇り
第2日目 快晴後ガス
第3日目 晴れ後雨
同 行 者 由李子

 第2日目

 昨日の夕方から落ち始めた雨は本降りというわけでもなくパラパラとフライシートを叩く弱い雨でした。
 何回かアルプスでテント泊まりをしていると雨の気持ちが理解できるようになり、「この雨は早朝には空に帰るだろう・・・」と思っていました。
 深い眠りから目が覚めたとき外は未だ真っ暗でしたが、テントの空気口から空を見上げると星が瞬いていました。
 辺りが白みかけたのでテントから出てみると空には雲一つ無く快晴です!
 テン場から西を見れば立山連峰が黒く聳えています。時刻は4時30分、日の出は25分後くらいでしょうか。唐松岳を見ると頂上や登山道に沿って蛍が飛んでいます。皆さん頂上からのご来光が目的のようです。
 ぼんやりと立山連峰や五竜岳を見ていると徐々に空が明るくなり、五竜岳や立山連峰が少しずつ赤みを帯びてきたなと思うとたちまち朝日に照らされてそれはそれは素晴しい景色となりました。

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「五竜岳と立山連峰 五竜岳と立山の間に右から薬師岳、北ノ俣岳、黒部五郎岳、水晶岳」

 朝食を終えて撤収に取り掛かっていると荷揚げのヘリがやってきました。ここのところの天気で荷揚げができず小屋も困っていたようで、楽しみにしていた生ビールは売り切れていて飲むことができませんでした。ようやくの荷揚げに小屋もホッとしているでしょう。
 準備を整えて6時丁度に出発です。気温が上昇しはじめたためかガスが沸いてきました。
 唐松岳に向かいながらふと砂礫を見るとコマクサが咲いています。これまでここで見たことはありませんので、植栽されたものだと思われます。結構増えていて辺り一面ピンクです。

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「唐松岳頂上山荘を出発」 「コマクサが綺麗に咲いていました」

 小屋から唐松岳頂上の標高差は70mほどなのでそんなに時間は掛かりません。
 登山道をしばらく登っていると稜線伝いになり北の方向に視界が開けこれから辿る稜線が目の前に見えました。
 頂上直下を左に巻いて登ると頂上に到着です。時刻は6時18分。
 唐松岳に登ったのは今回で私が5回目、由李子は4回目です。しかし、これまで晴れたことは一度も無く二人とも頂上から景色を見るのは今回が初めてです。360度の大パノラマです。

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「唐松岳頂上に到着」 「これから歩く稜線 天狗の頭の向こうに白馬鑓ヶ岳」

 のんびりと景色を楽しみたいところですが、唐松岳から天狗山荘までのコースタイムは5時間、今日は白馬頂上宿舎でテント泊の予定なので更に2時間50分の時間がかかり合計で7時間50分掛かります。休憩を除いたとしてもテン場の到着時刻は14時30分頃です。先を急ぎます。
 頂上からザレタ斜面を下って登り返すと不帰嶮V峰です。不帰嶮の危険な場所はU峰北峰からT峰の間なのでU峰北峰までは特に危険な場所はありません。
 順調に歩いて不帰嶮V峰に到着です。

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「不帰嶮V峰(正面)への向かうルート」 「不帰嶮V峰から見る不帰嶮U峰の連峰」

 気温が上昇しはじめたためか信州側からガスが沸いては消えています。立山連峰は晴れていますが、黒部峡谷の上部に浮雲が出て剣岳や立山を隠しています。以前由李子と八方尾根から扇沢まで縦走したときも同じように浮雲が居座って邪魔していたの思い出しました。
 この稜線は信州側が切れ落ちていますので尾根の上を歩くか富山県側を歩くことになります。信州側を歩くのはU峰北峰からT峰手前の鞍部の核心部のみです。
 富山県側を少し巻いたあとハイマツの間のルートをつづら折れに登ると不帰嶮U峰南峰に到着です。

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「富山県側を巻いてU峰南峰に向かう」 「不帰嶮U峰南峰に到着」
(後はガスに包まれた唐松岳)

 ここで少し休憩して白桃の缶詰を食べてエネルギーを補給します。糖分は脳の働きを良くするので注意が必要なこういうルートではとても大切なことです。
 不帰嶮U峰の南峰から北峰までの尾根は特に悪場は無く気持ちよく稜線を歩きます。振り返るとU峰南峰と唐松岳が良く見えました。唐松岳が見えるのもこれが最後かもしれません。 

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「U峰南峰から北峰に向かう稜線」 「振り返るとU峰南峰とその左奥に唐松岳が見えた」

 安全な稜線を順調に歩くと目の前に鎖の付いた岩場が現れました。不帰嶮U峰北峰に到着です。

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「鎖の掛かった岩場に到着」 「ここが不帰嶮U峰北峰です」
(お決まりの青いプレート)

 ここからが不帰嶮の核心部となります。
 U峰北峰から信州側に回りこみます。3mほど下ってから少し水平に移動すると鎖場にやってきました。10mほどの岩場を回り込む様に下ります。
 回り込むように下りが終わると今度は落ちれば止まらない岩場をトラバースします。先ほどの下りから考えれば水平移動なので3点指示を確実に守れば安全です。

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「最初の鎖場を下る」 「鎖場のトラバースを振り返る由李子」

 岩場のトラバースが終わると大きな岩塊の下を通過します。そこには有名なプレートが掛かっていました。
 プレートの横を通過し信州側を巻きながら草付きのトラバース路を進んで少し下っていくと鎖場となり目の前に水平梯子が出てきました。
 見ればそんなに危険ではありません。ところが、岩の向こうから若い女性が一人現れました。4人パーティーだそうでスライドできる場所が無いので待ってほしいと要請されました。するともう一人女性が現れてその女性にこと細かく指示していますが時間が掛かって仕方がありません。残りの二人が通過するまで10分ほど待ちました。
 水平梯子は短くまたしっかりとしており鎖もあるので問題ありません。慎重に渡って岩を乗り越えると鎖が付けられた岩場の斜面となり下ると鞍部に到着です。

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「U峰北峰の北側の基部にあるプレートを通過」 「水平梯子を通過する」

 鞍部から登り返してちょっとしたピークを富山県側から回り込むと今日一番の鎖場にやってきました。高さはそんなにありませんが左側はスッパリと切れています。鎖が取り付けてありますが足場が結構取りづらいので足の短い由李子は右足を出してみたり、左足を出してみたり戸惑っています。
 何とか最後の鎖場を通過して岩場を下って再び少し登り返すと不帰嶮T峰に到着です。
 今回一番の難所を無事通過して由李子もホッとした様子です。

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「今日一番の鎖場を通過」 「不帰嶮T峰に到着」

 15分ほど休憩をして出発です。
 不帰嶮T峰から下った鞍部が不帰キレットで、そこから天狗の大下りの登り返しが始まります。見れば正面に標高差400mの天狗の大下りが聳えています。なんという標高差でしょうか。危なくありませんが体力が・・・
 キレットに向かいながら振り返ると不帰嶮のT峰からV峰まで見ることができました。(トップの写真)
 何も無い鞍部の不帰キレットを通過し、いよいよ天狗の大下りの登りです。
 ハイマツの中のザレた道をつづら折れに登っていきます。遠くから見た天狗の大下りはただの稜線のように見えますが、登ってみると結構斜面は急で、また土が流されて岩がむき出しになった斜面に鎖が付けられた場所があったりします。確かに、標高差400mを登るのは辛いですが、「ここは下るよりも登った方が安全だ」と由李子が言っています。

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「前方に天狗の大下りが聳えている」 「岩場を攀じる」

 天狗の大下りを登りながら振り返ると立山連峰と後立山連峰の間を流れる黒部川の上流に青々と水を湛えた黒部ダムを見ることができ、その擁壁もはっきりと見ることができました。
 不帰キレットから50分掛けて標高差400mを登りきりました。

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「天狗の大下りを登り終えて振り返る」(右上に黒部ダム)

 今回の難所はすべて終わりました。後は稜線闊歩して天狗山荘に向かいます。
 天狗の大下りを登りきった後の稜線歩きはとても楽です。登山道の脇を見ればコマクサが沢山咲いていました。
 30分ほど穏やかな稜線を歩くと何の変哲も無いピークの天狗ノ頭に到着です。
 これまでそんなに濃くなかったガスが徐々に濃くなってきて景色が見えにくくなってきました。この後は景色を見ることが難しいかもしれません。でも、これが夏の山の天気です。
 順調に稜線を歩いて天狗山荘に到着です。これで栂池から扇沢までつながりました!
 時刻は10時45分。唐松岳から4時間15分の所要時間でした。

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「正面の小高い天狗ノ頭に向かう」 「天狗山荘に到着」
(正面に白馬鑓ヶ岳)

 由李子の健闘を讃えて乾杯しました。ここで昼食休憩とします。
 濡れたフライシートを干したり、食事をしたりと1時間ほどゆっくりと寛いだ後出発です。
 小屋から尾根に戻る登山道を登り返しているとミヤマオダマキが綺麗に咲いていました。そういえば3年前、ここから唐松岳に向かう予定でしたが雨のため断念し鑓温泉に向かってこの道を歩いているとき突然の「お父さん雷!」の由李子の言葉で走るように小屋に戻ったのが思い出されます。
 小屋から20分で鑓温泉の分岐に到着です。見れば多くの人が大出原に向けて下山しています。当初私は鑓温泉にテントを張って温泉に浸かる予定にしていましたが由李子が白馬岳にも登るというので予定を変更しました。
 この分岐から山は茶色とハイマツの色から白に変わります。

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「ミヤマオダマキ」 「白馬鑓ヶ岳へ」

 順調に歩いて白馬鑓ヶ岳頂上に到着。残念ながらガスで白馬岳を見ることはできず、目の前の杓子岳が見えているだけです。
 小休止した後杓子岳に向かいます。
 このルートは過去2回歩いていますが、北に向かって歩くのは初めてなので白馬鑓ヶ岳から杓子に向かっての下りは結構急だと思いました。
 鞍部に到着して歩いていると「お父さん、あの雪渓の上を動いているのは何だろう?」と由李子が言います。左の清水谷の方向を見ると黒い点が4つ5つ動いています。どうもニホンザルのようです。
 私は杓子岳に登るつもりはありませんでしたが、巻き道と杓子への分岐に到着すると由李子が立ち止まってニコニコしながらこちらを見ています。まさか・・・
 杓子岳への登りは堪えました。登るつもりはなかったのですから。20分掛けて杓子岳に立つもののガスで眺望は全くなし・・・
   頂上には「岳」に感化されたのか学生らしき男女4人が頂上で「イヤミのシェー」をやって写真を撮っています。呆れたのか由李子は黙って既に下り始めています。

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「杓子岳」 「ザレタ斜面を下る」

 ガスで何も見ることができなかった杓子に別れを告げてザレタ斜面を下りきると後は丸山への登りだけです。
 しばらく登ると右下の葱平を登ってくる登山者が見えました。小屋はもうすぐですのであと少し。
 ところが登ってものぼっても頂上宿舎が見えてきません。これまで丸山から杓子岳手前の鞍部までの下りしか歩いたことしかない私はどうも距離感を間違えているようです。
 杓子岳を下りきった鞍部から15分歩くと正面に白馬岳が大きく見えてきました。頂上宿舎のテン場はもうそこです。
 丸山手前のお花畑がとても綺麗でしばらく花々を眺めた後テン場に到着です。
 時刻は14時50分、唐松岳頂上山荘を出発して8時間50分の歩行でした。
 この後テントを設営しビールを飲みながら夕食を楽しみました。
 ところが・・・
 夕闇が迫ってくるころ空からポツリポツリ・・・

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「丸山の手前から白馬岳を望む」 「綺麗なお花畑」

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